大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和24年(オ)251号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人奥田一司の上告理由は後記書面のとおりである。所論のうち、原審の専権に属する事実認定及び証拠の取捨判断に対する非難と、並びに新なる主張と見るべき部分は、いずれも適法な上告理由にあたらない。その余の論旨、すなわち上告人が、原審において病気のため出廷できないので口頭弁論期日の変更を求めたが、原審はこれを許さず弁論を終結し、判決の言渡しをしたことに対する不服について調べて見るに、記録によれば、上告人は第一審以来一度も口頭弁論に出頭せず、また代理人を選任した跡も認められない。そして上告人又は上告人の妻から病気のため出頭できない旨の書面が提出されて居り、特に原審の最終口頭弁論期日について、上告人は医師の診断書を添え期日変更の申請をしているが、原審はこの申請にかかわらず、当日弁論を開いてこれを終結し、上告人敗訴の判決をしたことが認められる。かかる場合においては期日の変更を許さず、弁論を開いても違法でないものと解するを相当とする。けだし本件においては、上告人は第一審以来病気を理由に終始弁論に出頭しなかつたのであるから、その理由の存続する限り、上告人は、代理人を選任するとか、準備書面によつて主張を明らかにするとかの方法を講ずべきであるのにこれを為さず、控訴審においてさらに同じ理由で期日の変更を求めたのであつて、このような場合は、上告人が期日に出頭する不定期の障害があると認められ、このために訴訟が見通しなく遅延することは許されないのみならず、前述のように上告人は防御の方法を講ずることができたのであるから、期日の変更を許さなかつたからといつて、防御権を制限したということはできない。従つて原判決はこの点についてもなんら違法はなく、論旨はとるを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、全裁判官一致の意見により、主文のとおり判決する

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例